知っておきましょう-アトピー性皮膚炎-

アトピー性皮膚炎は、症状の改善と悪化を繰り返す、湿疹とかゆみを伴う皮膚の病気で、家族や本人に気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎などがみられる、IgE抗体(※)を産生しやすい体質といった、アトピー素因を持つ人に主に発症します。湿疹が左右対称に分布するのが特徴ですが、乳児期は口の周りや頬、幼小児期は背中やわき腹、肘・膝の裏側、思春期や成人期には首の回りや全身と、年齢によって湿疹ができやすい部分が拡大・変化していきます。

※IgE抗体とは…抗原(アレルゲン)と結合することで炎症を引き起こす物質を放出させ、アレルギー反応を引き起こす物質。

アトピー性皮膚炎の診断

医師は「かゆみの有無」「皮膚症状と湿疹の分布のしかた」「症状が反復しているか」という3つの要素から診断。その症状が軽いか重いかは問わず、これら3つの項目に当てはまれば、アトピー性皮膚炎と診断されます。場合によっては血液検査をすることもありますが、あくまでも診断の補助としてIgE抗体などの数値を知るために行います。診断の補助としては、ほかに家族に同様の症状がみられるか、あるいは合併症があるか、なども考慮します。

アトピー性皮膚炎にみられる皮膚の状態

紅斑(こうはん)

皮膚表面が赤くなる

丘疹(きゅうしん)

小さなブツブツができる

痒疹結節(ようしんけっせつ)

硬い芯があってブツブツした、ひどくかゆいしこり

鱗屑(りんせつ)

カサカサして皮がむける

苔癬化(たいせんか)

皮膚が厚くなり色素沈着して黒ずんでくる

痂皮(かひ)

かさぶたができる

掻破痕(そうはこん)

ひっかいて皮膚に傷ができた状態

防御機能の低下も問題

少し前までアトピー性皮膚炎は単純にアレルギー疾患として扱われており、患者さんにとってのアレルゲン(抗原)がダニやほこりなのか、あるいは食物かということが主に問題視されてきました。
確かにアトピー性皮膚炎にアレルギーは関与しています。しかし近年、アトピー性皮膚炎の原因としてアレルギー以上に、アトピックスキンと呼ばれる防御機能が低下した皮膚にも大きな問題があると考えられるようになりました。温度や湿度の高さ、そして汗などで症状が良くなったり悪くなったりするのは、防御機能が低下して刺激に弱くなった皮膚に、さまざまな要因が加わり、皮膚に炎症が起こるからなのです。

アトピー性皮膚炎の3大発症要因

1.環境要因

非アレルギー的要因…気候・発汗・ストレス
アレルギー的要因…ダニ・ほこり・食物

2.アトピー素因(体質)

家族や本人に喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎がみられたり、IgE抗体を産生しやすい体質のこと。両親のいずれかがアトピー性皮膚炎の場合、子供が小学生になるまでにアトピーになる確率は、正常な両親の約2倍といわれています。

3.アトピックスキン

防御機能が低下した皮膚。セラミドが減少して皮膚が乾燥した状態。

バリア役の中心はセラミド

角層は皮膚のもっとも表面にある薄い膜で、周囲の環境とは無関係に一定の水分を保っています。さらに皮膚に加わる刺激や異物侵入から身体をガードする役目も担っています。
角質の細胞がレンガブロックだとすると、細胞と細胞の間にある脂質はそれらのブロックをつなぐセメントの役割を果たします。細胞間脂質は保湿機能とバリア機能を持つセラミドで構成されていますが、不足することで皮膚が乾燥し、防御機能が低下してしまうのです。

アトピー性皮膚炎の治療

塗り薬のステロイド外用剤を使います

アトピー性皮膚炎の治療は、かゆみや湿疹が気にならない日常生活になることを目標とし、時間をかけて少しずつ症状を改善していきます。
皮膚症状である湿疹を早く改善するためにはステロイド外用剤がもっとも効果的です。緊急時にはステロイドの内服薬や注射を使う場合もありますが、基本的には塗り薬で対処します。
また、ステロイド外用剤のほか、肌の保湿などのスキンケアや、アレルギー的な要因に対しての対策なども行います。

ステロイド外用剤の副作用が怖い?

ステロイドは副腎皮質ホルモンともいわれ、体内で発生した炎症を軽減する作用を持つとともに、代謝に関わっている物質です。
ステロイドは長期間にわたって不適切に使用すると皮膚が薄くなって細い血管が目立つ、毛が多くなるなどの副作用が生じることがありますが、皮膚科専門のドクターの指示をしっかり守り、定められた用量で使用している限り、全身的な副作用を起こすことはありません。副作用を心配するあまり、自己判断で使用を中止すると、かえって回復が遅くなったり、症状が悪化してしまう場合があるので注意しましょう。

ステロイド外用剤のほかに使う薬

抗ヒスタミン剤は皮膚のかゆみを鎮める作用がある内服薬です。ただし、抗ヒスタミン剤には湿疹を治す効果はありませんので、アトピー性皮膚炎の原因のひとつであるアレルギー反応に対処するための薬として、ステロイド外用剤と併用されます。また、湿疹を鎮める目的で免疫調整外用剤が使われることもあります。

ステロイド外用剤の種類

ステロイド外用剤には軟膏やクリーム、ローションなど、いろいろな剤型があります。皮膚は体の部位ごとに角層の厚みや薬剤の吸収率などが異なりますので、ドクターは患者さん一人一人の皮膚の状態を総合的に判断してステロイドの強さと剤型を決定します。

各剤型の特徴

軟膏

皮膚に対して刺激が弱いため、どのような症状にも使用できますが、ややべたつきを感じます。ジュクジュクした部分や、びらんがみられる部分に用いられることが多いです。

クリーム

べたつきが軽減されてさらっとしているため、顔や手足に適しています。ただし刺激が強い場合があるので、ジュクジュクした部分や、びらんがみられる部分には比較的不向きといえます。

ローション

乳剤性やアルコール性の液体で、主に頭部やわきの下などの毛髪がある部分に用いられます。アルコール性のものは比較的刺激が強いため、傷がある場所や、びらんがみられる部分には適していません。なお、アルコール性よりも乳剤性の方が刺激は少なくなっています。

増加する大人のアトピー症状

アトピー性皮膚炎は通常、遅くとも15歳くらいまでには治癒していきますが、その後も継続して症状がみられたり、さらに悪化する場合もあります。顔や首に症状が出ることが多い大人のアトピー性皮膚炎は、苔癬化が進んで治癒しにくいといわれています。

ストレスなど精神面にも原因が

職場や学校での人間関係、家庭や進路などの将来への不安といったストレスで、つい痒いところをかいてしまうのは、精神的なストレスによって神経タンパクが分泌されてアレルギー反応が起きやすい状態になるためです。すると、ますます強い痒みを感じるため、さらに強くかいてしまうことになります。かくことがストレス発散となる場合もありますが、これでは悪循環の繰り返しで、症状は改善しません。また、ストレスが原因で痒みがないのにかく場合もあるようです。

大人のアトピーを改善するには

まずはストレスの原因を探ることからスタートします。精神的な問題が大きいため、薬物だけではなく、心のケアにも重点を置いた治療を進めていきます。
症状改善のためにはストレスがなくなるのが理想ですが、ストレスをためないようにと気にするあまり、それ自体がストレスになることもあるため、上手に気分転換する習慣を身に付けていきましょう。また、気楽に長く続けられる趣味を見つけるのも、ストレスを軽減するポイントです。

日々肌をいたわりましょう

もともとアトピー素因を持つ人でも、皮膚症状が改善した後に正しいスキンケアを続けていくことで、皮膚の乾燥を防ぎ、防御機能をキープすることが可能です。

いつも清潔な肌を

汗をかいたら早めに着替え、シャワーを浴びるなどして清潔な肌を心がけましょう。また、湯船につかる場合は、ぬるめのお湯に短時間入りましょう。体を洗うときは強くこすり過ぎないように。
洗浄料は皮膚への刺激が少ない微酸性のものを選びましょう。殺菌を目的としている薬用石鹸は刺激が強すぎる場合があるので注意しましょう。

保湿剤を効果的に

刺激が強すぎない保湿剤を選びましょう。乾燥する寒い季節は白色ワセリンなどの油性の軟膏、汗をかきやすい夏場はクリーム剤が向いています。また、背中などの手が届きづらい部分に症状がある場合に便利な保湿スプレーもあります。入浴後など清潔な肌状態にしてから、炎症が起きやすいところに使用します。

衣類は選択と洗濯が重要

直接皮膚に触れる衣類では、化学繊維やウールといった刺激のあるものを避けて綿製品を選ぶようにしましょう。締め付けの少ない衣服、長時間素肌を紫外線に当てない衣服を選ぶこともポイントです。また、肌着やシーツ、枕カバーなどはこまめに洗濯し、すすぎと乾燥を十分しましょう。外に干すときは花粉に注意が必要です。

生活空間の注意点

もっとも多くの人が陽性を示す抗原であるダニとハウスダストは、生活空間に少しの工夫を加えることで減らすことが可能です。
掃除がしやすいよう、家具を減らすことがポイント。床は畳やじゅうたんよりも、フローリングの方がダニやほこりが少なくなります。また、掃除するときは、ダニやほこりが飛び散りやすいほうきやはたきではなく、掃除機を使いましょう。
室内の湿気を少なくするよう、毎日窓を開け、外気を取り入れましょう。また、ダニやほこりが蓄積しやすいぬいぐるみなどの布製のものは、不要であれば処分すると良いでしょう。動物の毛が刺激になる場合もありますので、ペットを室内で飼うのは避けましょう。