毎日の食生活が大切-脳の健康を保つ-

脳は体重の約2%ほどの重さしかありませんが、全身で消費する全エネルギーのうち約20%を消費する重要な器官です。
脳のエネルギー源になっているのは、血液中のブドウ糖とケトン体。ブドウ糖は食事から摂取するほか、アミノ酸を原料に肝臓でも作られています。そして体内でブドウ糖が不足すると肝臓では脂質からケトン体が作り出されます。こうして私たちの体内では脳のエネルギーが不足しないよう、常にバランスが保たれているのです。

食生活チェック

毎日の食生活を振り返ってみましょう。当てはまる項目が多い場合は脳が老化している可能性があります。

野菜不足だと感じる
味の濃いものを好んで食べる
油っこいものをよく食べる
アルコールをよく飲む
インスタント食品や加工食品を食べることが多い
甘いものをよく食べる
食べるのが早いと言われる
タンパク質より炭水化物を多く食べる

食生活は脳の状態にも影響を与える

頻繁に外食する、インスタント食品や加工食品を食べることが多い、毎日お酒を飲む、夜遅くに食事をするなどといった食生活が続くと、血糖値、コレステロール値、中性脂肪値が上がったり高血圧が進んだりして、動脈硬化になる危険性が高まります。
動脈硬化が進むと血管がしなやかさを失ってしまい、心疾患や脳血管疾患などの命に関わる病気を引き起こしてしまうことも。そして脳血管の異常で脳内の血流が悪くなることによって、脳血管性の認知症につながる場合もあります。
生活習慣病はその病名のとおり、毎日の生活習慣によって引き起こされるものであり、突然発症するわけではありません。しかし、体感できる症状が出るまでには時間がかかるため、気づいたときには病気がかなり進行しているということもありえます。
この機会に普段の食習慣や日常生活を見直し、好ましくないと思う部分は少しずつ改善していきましょう。

脳が栄養を取り入れるしくみ

脳は毛細血管を通じて脳細胞の中に栄養素を取り入れます。脳の毛細血管には、血液脳関門と呼ばれる機構が備わっており、脳に不要な栄養素はこの関門を通って脳内に入ることができないようになっています。
脳がエネルギー源にしているブドウ糖やケトン体、酵素などは血液脳関門を通過できますが、脂質やタンパク質はそのままの状態では脳内に入ることはできません。
一方で注意したいのはアルコールやニコチン、カフェイン等です。これらの物質も血液脳関門を通り抜けて脳に影響を与えるため、慢性的な過剰摂取は避けるべきでしょう。

ブドウ糖の摂りすぎは逆効果

脳のエネルギー源となるブドウ糖ですが、その原料となる糖質の摂取が過剰になると、血管や脳細胞の老化が進む「糖化」につながります。
糖化とはエネルギー源として使い切れなくなったブドウ糖がタンパク質と結合して性質を変え、異常なタンパク質になってしまうことです。この異常なタンパク質はAGEs(終末糖化産物)と呼ばれ、一度できてしまうと分解されないまま体内に蓄積。血管や脳細胞のタンパク質を攻撃し、血管の劣化、脳の機能低下を引き起こしてしまいます。
また、過剰な糖質の摂取によって、午後の眠気、常に甘いものが食べたくなる、集中力や判断力が低下するといった症状もあらわれます。このような症状が思い当たる場合は糖質過多になっているかもしれません。食生活を見直し、栄養バランスを改善していきましょう。

糖質の種類

糖質は「単糖類」「二糖類」「多糖類」の3種類に大別され、それぞれ血糖値に及ぼす影響が異なります。
甘い菓子類や飲料の原料となるショ糖(砂糖)は単糖類であるブドウ糖と果糖が結合したものです。このままの形では体内で消化・吸収できないため、消化酵素によって再びブドウ糖と果糖に分解されて脳や全身に運ばれます。
2つ以上の糖が結合してできたでんぷんなどの多糖類に比べ、ショ糖は速やかに分解・吸収されるため、血糖値が短時間で上昇し、脳機能を不安定にします。
したがって甘いものを食べるときはショ糖を含むものよりも多糖類のでんぷんを含むものを選ぶことをおすすめします。

食後高血糖

食後高血糖とは、食事を摂った後に短時間で急激に血糖値が上がる症状です。健康診断などの血液検査は主に空腹時に行われるため、この症状を発見するためには食後1~2時間以内に血糖値を測らなければなりません。
急激な血糖値の上昇と下降を繰り返すと動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞にかかるリスクが高まります。
食後高血糖は食事の食べ方を工夫することである程度改善することができますので、ページ下部の「脳に良い食事のコツ」を参考にして食事の仕方を見直してみましょう。

脳の栄養が不足すると

脳が活動するために必要なタンパク質やビタミン・ミネラル等が不足すると、脳内で神経伝達物質が作られにくくなり、精神的にも肉体的にも不調があらわれます。

タンパク質不足

タンパク質は、皮膚や爪、筋肉といった体を形作るための基本要素であるとともに、脳が活動するために必要な神経伝達物質の原料にもなっています。
したがって、このタンパク質が不足することでセロトニンやドーパミンといった神経伝達物質が不十分になり、集中力や判断力の低下を招いてしまいます。

ビタミンB群不足

ビタミンB6や葉酸、ナイアシン等のビタミンB群は、脳内でも重要な働きをする神経伝達物質セロトニン、ドーパミン、ギャバを作り出すのに必要不可欠な成分です。不足すると眠れなくなったり、複雑な物事に対する理解力が低下したりします。

鉄分不足

鉄分も神経伝達物質を作るためには欠かせない成分。また、全身に血液を運んでいる鉄が不足すれば脳内が酸欠状態になり、疲れやすい、立ちくらみといった症状があらわれるようになります。

脂質不足

脂質は脳の細胞膜やストレス対抗ホルモンの原料になっていますので、極端に制限すると脳機能が低下し、ストレスを感じやすくなってイライラ傾向になります。

脳内の神経伝達物質

脳内で処理されるさまざまな情報を伝達している神経伝達物質は、うれしさや悲しさといった感情にも深く関与しています。
神経伝達物質は大きく「興奮系」「抑制系」「調整系」の3つに分けられます。元気ややる気、集中力に関与する興奮系はドーパミンやノルアドレナリンが代表格。抑制系であるギャバなどは興奮傾向の脳を鎮める働きをします。そして調整系のセロトニンは精神を安定させて心のバランスを保つ役目を担っています。
この3種類の神経伝達物質に過不足が生じると、イライラや落ち込みといった不安定な精神状態を招いてしまいます。

脳に効率よく栄養を補給

脳が正常に働くために必要なタンパク質やビタミン、ミネラルといった成分を効率よく摂取するための調理法や食べ方のポイントをご紹介しましょう。

動物性タンパク質

動物性タンパク質には、気分や感情をコントロールして心の安定を保つセロトニンの原料になるトリプトファンが豊富に含まれています。しかし、加熱することによってトリプトファンが壊れてしまうため、最も効率よく摂取できるのは生食ということになります。卵を卵かけごはんで食べたり、新鮮な魚は刺身やカルパッチョがおすすめ。牛肉はレアが苦手であれば、ミディアムレア程度まで火を通してもいいでしょう。
また、納豆と生卵を混ぜてごはんにかけたり、冷奴に鰹節やシラスを乗せたりするなど、植物性のタンパク質と動物性のタンパク質を一緒に摂るようにすれば栄養バランスもより良くなります。

ビタミンB群

脳機能の向上にとって重要なビタミンB群。ビタミンB6はカツオ、マグロ、サケなどに、ナイアシンはタラコやカツオなどに、葉酸はレバーなどに多く含まれています。
しかし、トリプトファン同様ビタミンB群も加熱で壊れてしまいます。レバーを非加熱で食べるのは危険が伴うのでおすすめしませんが、新鮮な魚であれば生で食べた方が効率よくビタミンB群を摂取できます。

鉄分

植物性の食材に含まれる非ヘム鉄は、動物性の食材に含まれるヘム鉄よりも体内吸収率が低いといわれています。したがって非ヘム鉄を摂取するときは、吸収を促進してくれるタンパク質やビタミンCと併せて摂るといいでしょう。

n-3系の脂質

サバやイワシといった青魚に豊富に含まれているDHAやEPAなどのn-3系脂肪酸。特にDHAは脳神経の細胞膜にも含まれており、脳機能向上に深く関与しています。
また、しそ油やえごま油などに含まれているα-リノレン酸は体内でDHAに変化するため、食生活に摂り入れるのもいいでしょう。
一方でお菓子やパンに使用されるショートニング、マーガリンやマヨネーズなどに含まれているトランス脂肪酸は脳に悪影響を与えることが明らかになっていますので、過剰な摂取は避けましょう。

脳に良い食事のコツ

脳の機能が安定して働くためには血糖値を安定させることが重要です。食事では以下のことに注意しましょう。

加工して精製された食品はできるだけ避ける

加工によって精製された食品は速やかに体内に吸収されるため、血糖値が短時間で上昇します。したがって白米より加工工程が少ない玄米、パンなら小麦粉よりも全粒粉で作られたものを食べるようにすると血糖値の上昇は穏やかに抑えられます。

食べる順番で血糖値コントロール

ごはんなどの糖質から食べ始めず、まずは食物繊維が豊富で血糖値上昇を穏やかにする野菜を、次に肉や魚の主菜でタンパク質を摂ってから、ごはんを食べるようにすると良いでしょう。

よく噛むこと

食べ物をよく噛むと満腹中枢が刺激を受けて食欲を抑えられ、過食を防止してくれます。また脳の血流が良くなって、脳細胞が活性化されます。
逆に、あまり噛まずに飲み込むような方は血糖値が上昇しやすいだけではなく、満腹感を感じにくいため肥満になりやすい傾向があります。

サプリメントの活用もおすすめ

血糖値をコントロールする水溶性食物繊維「難消化性デキストリン」などのように、食事とともに摂取することで食後血糖値の上昇を抑えてくれるサプリメントが多数販売されています。「症状はないけれど数値が気になる」「通院するほどではないものの今後が心配」というような方はこのようなサプリメントを利用してみるのも良いでしょう。

食事以外の注意点

健康的で若々しい脳を維持するためには、食事面の注意と併せて、喫煙や過度の飲酒といった脳に悪い影響を及ぼす生活習慣を改善した上で、以下の点にも注意しましょう。

体を動かす習慣をつける

食後30分以内に歩くことで糖が筋肉に取り込まれ、血糖値を下げることができます。また、運動によって適度な筋肉量を維持することは、血糖値上昇を抑えることにもつながります。

上手にストレスを解消する

仕事や家事などから生じる日頃のストレスを解消するための趣味を持つようにしましょう。また、入浴やアロマ、森林浴などでリラックスすると血糖値が安定するといわれています。

日常とは違う行動をする

初めての場所に旅行に行ったり、普段とは違う道を通って通勤したり買い物に行ったり。このような非日常的な行動をすることが脳に刺激を与えてくれます。

腸の健康が脳の健康

免疫細胞の約7割が集まっている腸は第二の脳ともいわれ、腸の不調は脳にも影響を与えます。日頃から腸内環境改善に有効な発酵食品や乳酸菌などを食事に摂り入れ、腸の状態を健康に保ちましょう。