知っておきたい-がんと生活習慣-

近年、わが国ではがんで亡くなる方が増加しています。毎年約30万人の方ががんで死亡しており、がんは国民死亡原因の第1位となっています。現在、全死亡に占める割合は約30%ですが、今後、高齢化社会の進展に伴い、まだまだ増えていくと予想されています。
日本人のがん死で最も多いのは以前は男女とも圧倒的に胃がんでしたが、2010年のデータによると、男性が肺がん、女性が大腸がんとなっています。また、依然として胃がんも上位となっているほか、最近では若い時からの女性の喫煙率の上昇によって、女性においても肺がんの増加が懸念されています。

がんと生活習慣のかかわり

近年の研究により、がんの原因は老化、遺伝、環境、そして日頃の生活習慣に深い関係があることが分かってきました。例えば、肺がんと喫煙、胃がんと食塩、大腸がんと肉食などの関係があげられます。がんを招く2大因子はたばこと食生活です。たばこががんの危険因子であることは今や常識です。たばこは肺がんだけでなく全てのがんの誘因となりますので、まずは禁煙することが大切です。
食生活に関しては、まず偏食せずバランスよく何でも食べることです。また、塩辛いものを避け、アルコールは控えめにすること、緑黄色野菜を豊富にとること、などがあげられます。
このように日常生活の中で各自が少し気をつけることががんの予防に役立つのですから、禁煙と食生活を中心とする健康的な生活習慣をどう実践するかがとても重要といえます。

胃がん

胃がんとは

胃の粘膜にできた悪性腫瘍を胃がんといいます。胃がんは50歳後半~60歳代にできる人が多く、男性に多いがんです。最近は減少傾向にありますが、日本人の胃がんにかかる割合は依然として高い傾向があります。
胃がんは胃壁へのがんの進行度によって「早期胃がん」と「進行胃がん」の2つに分けられます。「早期胃がん」は無症状の場合が多いのですが、人によっては胃部の不快感や胸やけ、げっぷ、食欲不振などを訴える場合があります。「進行胃がん」になると食欲不振が進んで、おなかが張る、ときどき痛む、血を吐く、下血する、衰弱が目立つといった症状が現れるようになります。さらに進行すると、がん細胞が血液などに入り込み、肺や肝臓など他の臓器に転移してしまいます。
胃がんは検査結果からがんの進行度や病巣の大きさ、転移の有無などを調べることによって、早期胃がんと進行胃がんとに区別され、その治療方針が決められます。早期胃がんは自覚症状がないため、そのほとんどは検診や人間ドックで見つかっています。そして、早期に発見して治療を受ければ、ほとんどといってもいいぐらい確実に治すことのできるがんなのです。

塩分のとり過ぎに注意

これまで胃がんは日本人に多く欧米人に少ないことなどから、日本人の体質的な要因が大きく作用していると考えられてきました。しかし、欧米型の食生活をしている日本人の場合、胃がんより大腸がんが多いことが分かってきました。こうしたことから、塩分の過剰な摂取(魚の干物、塩辛い漬物など)、ビタミンの摂取不足など、日本人の食生活と胃がんの関わりに注目が集まっています。
さらに喫煙も大きな危険因子です。たばこに含まれる有害物質が胃の粘膜を刺激し、胃がんの原因にもなります。そして、アルコールと同時に喫煙するとさらに危険度が増すといわれています。

胃がん予防・気をつけたいこと

食事

・食品数を増やし、栄養のバランスをとる
・塩分は控えめに
・新鮮な野菜や果物を十分に
・牛乳をよく飲む

食習慣

・ひどく熱い食べ物や飲み物等は冷ましてから
・こげた物は避ける
・大食い、夜食、早食いはしない
・よく噛んで、ゆっくり食べる

肺がん

肺がんとは

肺がんは、肺・気管支にできる悪性腫瘍のことをいいます。近年増加傾向にあり、平成5年の男性の死亡が初めて胃がんを抜いて第1位になりました。
肺がんは気管支から分かれる比較的太い気管支にできる「肺門部がん」と末端の肺胞につながる細い気管支にできる「肺野がん」の2つに分けられます。
肺がんの症状の特徴は咳と痰です。特に痰に血が混じった「血痰」が出ることが知られています。肺門がんの場合、がんが大きくなると気管支をふさいで痰が出にくくなります。また炎症を起こしてかぜや肺炎のように発熱を伴う咳や痰が続き、なかなか治らないことがあります。
肺野がんはかなり大きくなるまで自覚症状がなく、がんが周囲の組織を侵すようになってから胸や背中に痛みが現れてきます。さらに、がんが進行して血液などを通じて転移するようになると症状は悪くなり、呼吸困難やリンパ節の腫れなどの症状も出てきます。

たばこが最大の原因に

たばこは多くのがんに関係していますが、特に肺がんの主な原因となることはよく知られています。喫煙者はたばこを吸わない人と比べて4.5倍も肺がんによって死亡する人が多く、若い頃からの喫煙者が肺がんになる危険率はさらに高いといわれています。ひとくちに肺がんといってもその病理組織によって扁平上皮がん、腺がん、大細胞がん、小細胞がんの4種類に分けられますが、どれもたばことの関係が明らかになっています。
肺がんは何十年もの喫煙習慣によることが多いため、吸い始めないこと、吸っていたら禁煙することが何より大切です。

肝臓がん

肝臓がんとは

肝臓がん(肝がん)は肝臓にできる悪性腫瘍で、大きく分けると最初から肝臓の組織に発生した「原発性肝がん」、肝臓以外のところにできたがんが転移して発生した「転移性肝がん」があります。肝臓は代謝の中枢であり、血液が豊富ですので他からのがんの転移が非常に多く、すべてのがんの転移先の50%が肝臓に集中しています。近年、50歳以降の男性で肝がんは増加の一途をたどっています。
症状は相当進行するまでほとんどありませんが、他の肝臓病と同じように、だるさやおなかが張る感じなどが出る場合があります。進行すると黄疸、体重減少、腹水、悪心や嘔吐などの症状が現れてきます。
原発性肝がんに関しては、その原因の約90%はウイルス感染症です。特にC型肝炎ウイルス(HCV)は持続感染することにより、慢性肝炎から肝硬変に移行します。そしてそこから肝細胞がんが発生する例が多いのです。また、原発性肝がんをよく調べてみると、肝硬変を合併している場合が多く、さらに慢性肝炎を含めると、そのほとんどが肝障害を合併しています。ですから、肝硬変あるいは進行した慢性肝炎の人は肝がんの危険群といえます。
アルコール性肝障害や脂肪肝から肝硬変になった場合には肝がんになる率は低いとされていますが、お酒の量が日常的に多い人がウイルス性肝炎となり、肝硬変となった場合には、高い確率で肝がんが発生するといわれています。

肝臓をいたわる生活を

肝臓は多少調子が悪くても症状が表に出にくいので、日頃から肝臓をいたわることが大切です。そのためには、良質なたんぱく質をしっかりとること、ビタミン・ミネラルが多い栄養バランスのとれた食事を心がけることです。そして日頃から飲酒量が多い人はアルコールを控え、肝臓をいたわりましょう。
肝がんを予防するには40歳からは年1回定期的に血液検査や腹部エコーなどの検査を受けることです。すでに肝炎や肝硬変のある人は要注意。より頻繁にチェックを受けることが大切です。

肝臓がん予防・気をつけたいこと

食生活での注意

・緑黄色野菜をたくさん食べる
・良質のたんぱく質をとるよう心がける
・脂肪・糖質のとり過ぎを避ける
・食後は1時間ほど横になり、肝臓への負担を軽くする

日常生活での注意

・慢性肝炎か肝硬変があれば医師の診断を受け、指示を守る
・原則禁酒
・十分な睡眠と適度な運動を心がける
・禁煙

大腸(直腸・結腸)がん

大腸がんとは

大腸がんはこれまで日本では少なく、欧米に多いがんとされてきましたが、近年、食生活の欧米化などに伴い、増加傾向にあります。
大腸のうち結腸(上行、横行、下行、S状)にできた悪性の腫瘍を結腸がんといいます。大腸がんはS状結腸から直腸に発生することが多く、全大腸がんの約7割を占めています。肛門に比較的近い部位に発生するため、便の観察などによって自分で気づくことがあります。
特に血便には注意が必要です。便が病巣を通過するとき病巣をこするため、便の周りに血がついたり、便の中に血が混じったりして黒っぽくなります。さらに進行すると、便秘や下痢を繰り返したり、腹痛や腰痛、貧血などの症状も現れます。
大腸がんは早期のうちに発見し、患部を取り除けば、ほぼ治るがんです。血便が出たり、便秘と下痢が交互に起こる、以前より便の回数が多くなった、あるいは排便してもすぐに便意を感じるなどの症状がある人は、積極的に検診を受けてみましょう。

食物繊維の不足に注意

日本の食生活が欧米化してきたことが、大腸がんが増加している原因と考えられていますが、具体的には食物繊維の摂取不足や動物性脂肪のとり過ぎがあげられます。最近の研究では大腸がんは繊維を多く含む食品(野菜、いも類、茸類、海藻類など)をたくさん食べて排便をきちんとしていると、あまり起こらないことが分かってきました。
また、高脂肪食品は便秘を起こしやすく、硬くなった便の滞在時間が長くなることも大腸に悪い影響を与えると考えられています。ですから大腸がんを予防するにはまず、日頃の食生活を見直すことが大切といえます。野菜など食物繊維を多くとること、動物性の高脂肪・高たんぱくの食物を避けることなどを心がけましょう。また、便秘を解消することも大切です。そのためには1日3回決まった時間に食事をすることと、生活リズムを整えて適度な運動をすることです。これが規則正しい排便習慣につながります。

大腸がん予防・気をつけたいこと

食生活での注意

・脂肪の摂取量を控えめに
・食物繊維(野菜・豆・海藻類)を十分に
・緑黄色野菜をたくさん食べる

日常生活での注意

・便秘にならないようにする
・痔はきちんと治す
・便の様子に普段から注意し、異常があればすぐ検査を受ける

乳がん

乳がんとは

乳房には乳汁を分泌するための乳腺がはりめぐらされていますが、この乳腺にできる悪性の腫瘍が乳がんです。40~50歳代の女性に最も多く、60歳代、30歳代と続きますが、中には20歳代で発病する場合もあり、年々増加しています。
乳がんが増加している原因として、食生活の変化があげられています。乳がんは女性ホルモンとの関係が深いのですが、欧米では日本の5~6倍も乳がんの発病率が高いことから脂肪の摂取量が影響していると考えられています。また「高齢出産」「早い初潮」「遅い閉経」「肥満」などのタイプの人がかかる率が高いといわれています。
生活習慣上で心がけたいことはまず、1日3回のバランスの良い食生活にすることです。特に肉類の食べ過ぎに注意し、肥満を防止しましょう。緑黄色野菜を積極的にとることも忘れずに。そして毎月1回、風呂上がりのときなどに自己検診をしてみることです。

自己検診で早期発見を

乳がんは自分で触ることのできる数少ないがんです。早期発見のためにも自己検診法を覚えて実行してみましょう。

1.鏡の前で腕をおろした状態で、乳房や乳首にくぼみや左右の形の違いがないかチェックする。

2.指の腹でなでるように円を描きながら、しこりの有無を調べる。

3.指の腹に軽く力を入れ、肋骨と平行に外側から内側に移動させ、しこりがないかチェックする。上下左右にずらしてみる。

4.起きた状態やイスに座って調べる時は2や3の方法で行う。

5.仰向けに寝て行う時は肩の下にクッションなどを入れ、触る方の腕を頭の下に置き、わきの下を伸ばした状態で2や3の方法で調べる。

6.最後に乳首をつまみ、分泌物が出ていないかチェック。血性の分泌物は要注意。

乳がん予防・気をつけたいこと

日常生活・食生活

・乳腺症になったことがある人は、定期的に専門医を受診する
・風呂上がりの時など毎月1回、自己検診を行いチェックする
・脂肪やコレステロールのとり過ぎに注意
・緑黄色野菜を多めに

がん予防と免疫

免疫とは

人間の体には、外から侵入したウイルスや病原菌などに対し、抗体やリンパ球などによって闘う「免疫系」という自己防衛機構があります。免疫には体にとっての異物(非自己のもの)を排除する能力があって、ウイルスなど「外敵」が侵入してもそれを見分け、直接攻撃するなどして外敵から身を守っているのです。
このように我々の体にとって重要なはたらきを持つ免疫ですが、一般に免疫能力は老化とともに低下してしまうため、外敵に対する攻撃力が次第に衰えて、やがてがんや感染症などの病気が発症してしまいます。ですから、我々の体に本来備わっている「免疫力」を高めることが、がんをはじめ感染症や生活習慣病の予防につながるのです。

40歳からがんに注意

この免疫のはたらきによって、体内で異変を起こしてがん化した細胞も、その増殖や転移が抑えられています。健康な人でも1日に3000個の細胞ががん化しているといわれます。免疫力が高いうちはそれを抑えられますが、免疫力が低下してくるとがん細胞は分裂・増殖を続け、1年後には約6万個にもなります。免疫は20歳前後から低下し、約20年後の40歳代から急速に減少するため、がんの多くは中高年からの病気となっているのです。

免疫力が低下すると…

一方、免疫力の低下はがんのほか、さまざまな病気を引き起こす原因となります。免疫力が低下すると細菌やウイルスの侵入を容易に許すことになり、ちょっとしたことでも体調を崩したり、ウイルスなどに感染しやすくなります。小さな子供やお年寄りが感染症にかかりやすいのも、免疫力の低下に関連していると考えられています。
また、免疫が過剰に反応してしまう場合も問題です。免疫細胞が何らかの原因により自己と非自己の区別があいまいになった結果、アレルギー反応を起こしてしまうのです。花粉症や喘息などもその一つで、免疫系のはたらきの異常、過剰な反応によって起こる病気です。

免疫のしくみとはたらき

免疫細胞

免疫のための特定の器官はなく、骨髄、胸腺、脾臓、リンパ節、血管、胃腸などの器官や組織が協力しあって免疫系を構成しています。これらの器官・組織で白血球、マクロファージ、T細胞、B細胞といった免疫細胞がはたらいています。

異物への攻撃

体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体や、体内で発生したがん細胞などの異物に対して、活性化した免疫細胞が攻撃します。その攻撃方法は2つに分類されます。

直接攻撃

抗原に対して直接攻撃します。
マクロファージ、キラーT細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球など

間接攻撃

抗原に対して免疫細胞がサイトカインや抗体などの「飛び道具」を放出して攻撃します。
サイトカイン(インターロイキン、TNF-α、INF-γなど)、抗体など

免疫力を高めるには

免疫力を高めることは、がんを予防するうえで重要な要素の一つです。そのために日常生活で気をつけたい点は、喫煙しない、適量の飲酒に抑える、規則正しい食事と睡眠、適度な運動、ストレスをためない、などがあげられます。
また、免疫力を高める食品としては、乳製品や大豆製品、かぼちゃやニンジンなどの野菜、果物、海藻類など数多くありますし、茸類に含まれる成分も免疫力の向上に役立っているといわれます。生活習慣の改善と免疫力の向上で、がんを予防したいものです。

腸が悪いと免疫力が下がる!?

人間は一生涯で約100トンともいわれる食物をとります。食物にはたんぱく質やビタミンなど、体に必要な成分が数多く含まれていますが、それと同時に有害な成分や細菌なども含んでいます。
近年の研究によれば、胃腸はこれら食物の消化や吸収だけでなく、免疫に深くかかわるはたらきをしていることが分かってきました。体力が低下したとき、栄養のあるものを食べると元気になることはよく知られていますが、免疫力が低下したときにも、たんぱく質や微量な成分が腸から吸収され、免疫力をアップさせているのです。
また、食物に含まれる成分の中には、腸で吸収されるのではなく、腸にある免疫細胞を刺激することによって体全体の免疫力をアップしたり調整するものもあると考えられています。
腸には体の免疫細胞の1/3が集まっています。だからこそ免疫力を上げるためには善玉菌を増やして腸を健康に保ち、栄養を十分にとり、そして腸に刺激を与えることが大切なのです。これが免疫力アップの新しい方法です。

がんの危険信号8カ条(日本対ガン協会)

1.胃がん
胸やけや胃のもたれなど、胃の具合が悪くないか?食べ物の好みが変わったりしないか?

2.食道がん
食べ物や水を飲み込むときに胸につかえる感じがしないか?

3.結腸がん、直腸がん
便秘と下痢を繰り返していないか?便に血液や粘液が混じったりしないか?

4.肺がん、喉頭がん
咳が長引いたり、痰に血が混じったりしていないか?

5.舌がん、皮膚がん
治りにくいできもの、潰瘍がからだのどこかにないか?

6.子宮がん
おりものが出たり、不正性器出血はないか?

7.乳がん
乳房のなかにしこりが触れることはないか?

8.膀胱がん、前立腺がん
尿の出が悪くなったり、尿に血液が混じったりしないか?