鼻を知る-しくみとはたらき、鼻トラブル-

鼻は人体のエア・コンディショナーともいわれます。
鼻毛や鼻の中の上・中・下鼻甲介は、ちりを除き、加温・加湿します。また、においを感じ取るはたらきは、おいしく食事をするためだけではなく、危険から身を守るためにも欠かせません。そして声に特徴を与えているのも、鼻です。

鼻ってなんだ?

エア・コンディショナーとしての鼻

呼吸器官である肺の細胞は直接外気に触れます。細胞は低温・乾燥に弱いので、鼻は肺の細胞を保護するためヒダ状構造(上・中・下鼻甲介)で表面積を大きくすることにより、吸い込んだ空気に湿り気と温度を与えています。鼻粘膜表面は線毛と粘液で覆われ、微細なチリ(100分の1mm)まで取り除くことができます。

声に個性をつくる鼻

声はのどにある声帯でつくられます。鼻腔や口腔はその声を共鳴させて、人それぞれの声に個性をつくり出しています。口から空気を出す場合と鼻から出す場合で、言葉の発音は変化しますが、口で発音するときは口の開け方でさまざまな音を表現し、鼻から出すときは鼻音といって、とくにマ行、ナ行、ガ行の音がよく共鳴します。

鼻のしくみとはたらき

鼻腔の中は鼻中隔で左右に分かれます。左右の鼻腔には通常3つの肉ヒダ(鼻甲介)があり、入りくんだ形のトンネルになっています。その外側に4つの袋状の空洞(副鼻腔)があります。

鼻中隔部

鼻中隔は鼻の中(鼻腔)をタテに2分する壁です。ほとんどの人では多少なりとも曲がっており、そのことが鼻づまりを起こしたり、炎症を悪化させたりする原因にもなっています。鼻甲介とともに鼻中隔の粘膜には、吸った空気の温度を調整するために血管が多く分布しています。そして鼻孔に近いキーセルバッハ部位は特に細い血管が密集しているため、ちょっとした刺激で傷つきやすく、鼻血が出やすい場所になっています。

側壁部

鼻腔は鼻中隔によってタテに2つに分けられていますが、左右それぞれに、通常3つの肉ヒダがあり、上部から順に上鼻甲介、中鼻甲介、下鼻甲介といいます。そして、この鼻甲介と側壁の間の空気の通り道は同じく上部から上鼻道、 中鼻道、 下鼻道とよばれています。
鼻腔の天井にはにおいを感じる嗅裂があり、鼻甲介のかげには副鼻腔に通じる孔や、目からの涙の通り道である鼻涙管の口もあります。
約2.4平方センチメートル(切手1枚ほど)の嗅粘膜には多数の線毛があります。空中を浮遊するにおいの微粒子は、粘液にとけて嗅線毛を刺激し、その信号が嗅球(受容細胞)を経て大脳の嗅覚中枢に伝えられ、においを感じます。このにおいの受容細胞の数は私たち人間では500万個であるのに対し、イヌには1~2億個もあり、においを感じる能力も人間の100万倍といわれています。
側壁部にはそのほかに、耳とつながる空気の抜け道である耳管咽頭口、鼻腔と口への空気の通路を切り替える弁である軟口蓋などがあります。耳管咽頭口は通常は閉じていて、つばを飲み込んだりあくびをしたりすると開いて気圧を調整します。軟口蓋は食事中に鼻腔の後ろをふさいで食物が鼻腔へまわらないようにしています。

鼻、耳、のど、目はつながっています

鼻の奥はのどになり、その奥の気管や食道につながっています。また鼻咽腔に開いている耳管を経由して耳に、そして鼻涙管を通じて目にもつながる交通路です。一方、のどの軟口蓋は鼻腔と口腔の間で、交通整理の役目をしています。
鼻をかむと耳がツーンとしたり、聞こえにくくなったりするのは、耳の鼓膜が一方へ押しつけられるからです。そんな時、つばを飲み込んだり、あくびをしたりすると治るのは、耳管が開いて耳に空気が通じるためです。また、食事中にくしゃみをすると鼻から食べ物が出てくるのは、軟口蓋がゆるんで食道にまだ達していない物がくしゃみと一緒に鼻からでるからであり、泣くときに水様の鼻水が出るのは、涙が鼻涙管を通じて鼻に流れるためです。

鼻くその正体

人体のエア・コンディショナーのフィルターにたまるゴミ、それが鼻くそです。乾いた空気を吸っていると鼻粘膜の表面が乾いて、鼻毛に付いたホコリや鼻水、粘液が固まりになります。これが鼻くその正体です。

鼻水とは

健康な人が鼻腺から1日に出す水分は約1リットル。鼻水の大半はその鼻腺から出ています。涙や呼気の水分も少し含まれています。風邪をひいたときの黄色い「青っぱな」は、風邪のウイルスや菌を捕らえた白血球の死骸が多いため。ひき始めの風邪やアレルギー性鼻炎の鼻水がサラサラなのは、粘っこくする成分が少なく、水のような分泌液が鼻腺から出るためです。

鼻でアレルギーが起こるわけ

鼻から吸った空気中のチリのうち、100分の1mm以上の粒子のほとんどは鼻でストップし気管に入りません。スギ花粉などはこれより大きいので、鼻で捕らえられ鼻炎を起こすのです。もっと細かいチリやウイルスが原因のときは、鼻で阻止されず気管支まで達して、気管支喘息や気管支炎を起こしたりします。

鼻トラブル

鼻にはトラブルがつきもの。それは鼻が体外から危険を受け取る最前線にあるためです。風邪のひき始めに鼻がグズグズするのはウイルスや細菌から自己を守る反応のあらわれです。花粉症などのアレルギー性鼻炎も、花粉などのアレルゲンから自己を守る反応ですが、行き過ぎるとかえって困ったことになります。

つまる

鼻腔が狭くなっている状態。鼻粘膜にはたくさんの細血管があり、鼻炎を起こすとこの血管が膨張したり、粘膜が浮腫を起こして(むくんで)鼻腔が狭くなります。また、固まった鼻水が付着して症状をひどくしたり、鼻中隔彎曲や鼻茸で鼻腔が狭められて鼻がつまることもあります。

かゆい

花粉症などアレルギー反応で放出されたヒスタミンが鼻粘膜の三叉神経を刺激してかゆみを感じさせます。このようなかゆみが強いときには抗ヒスタミン剤が有効です。

くしゃみ

鼻へ入る異物を排除しようとする防御反応。強いときは時速160kmにもなります。鼻粘膜に分布する三叉神経からの刺激が脳へ伝えられ、その反射で起こります。アレルギーでは抗原が刺激になり、治療には抗ヒスタミン剤が使われます。また、コショウやホコリ、光なども刺激になります。

いびき

鼻だけが原因ではなく、鼻からのどに至るどこかが狭くなっても起こります。鼻では鼻中隔彎曲やアレルギー性鼻炎で鼻がつまっているとき、のどでは、口蓋扁桃が大きい場合や子供のアデノイド(扁桃組織)肥大で起こります。睡眠中に筋肉がゆるんで舌根が後ろに沈下するといびきをかきやすく、横向きに寝ると多少は楽になるようです。

鼻腔異物

保護者が目を離したすきに子供が異物を鼻の穴に詰めることがあり、5~6歳の小児に多くみられます。多いのはボタン、ビーズ、豆類など。口臭があったり、鼻が匂うときは疑ってみる必要があります。特にボタン型電池は短時間で粘膜を腐らせ、重大な障害を引き起こすので、電池は子供の手が届くところに放置しないよう気をつけましょう。

においがわからない

主に鼻の通りが悪いために、においの分子が嗅上皮に届かないケース(アレルギー性鼻炎や鼻茸)やにおいを感じる側の障害(風邪や慢性副鼻腔炎)で起こりますが、アルツハイマーなど脳の病気で起こることもあります。なお口臭や体臭がないにもかかわらず、自分が臭うと思い悩み、対人関係に支障を来たす「自己臭症」もありますが、これは嗅覚障害ではありません。

鼻汁

健康な人では1日に約1リットルの水分と鼻汁が分泌されており、吸気の温度、湿度の調整をしたり浄化をしたりしています。
鼻汁にはサラサラの水様鼻汁(鼻水)と、粘り気のあるもの、黄色い膿状のもの(白血球の死骸を含む)があり、粘性・膿性のものは副鼻腔の炎症(急性・慢性副鼻腔炎)が原因になっています。風邪ではサラサラの状態から粘り気のある状態に変化しますが、アレルギー性鼻炎ではサラサラのまま長く続きます。寒いときや熱い汁物を食べるときにも鼻水が出ますが、これは温度刺激で鼻のマスト細胞からヒスタミンが放出され、延髄から副交感神経を経て起こるものです。

鼻血

鼻には、吸気の温度調整をするために多くの血管が集まっているため、鼻をほじったり、勢いよく鼻をかんだりすると出血することがあります。そして鼻血の80%以上は、鼻の穴の入り口付近からのものです。たいていは片方の鼻の穴から出血しますが、両方からあふれるように出るときは、病気が関係することもあるため、医師の診察を受けましょう。

薬による鼻のトラブル

鼻の治療をするはずの薬が、使い方によってトラブルのもとになることもあります。鼻づまりを取る点鼻薬(血管収縮薬)を長期間使い続けて、かえって鼻づまりがひどくなることがありますので、気になる方は専門医に相談しましょう。

鼻のお助け役

鼻は呼吸の第一関門。具合の悪いときや、悪くなりそうなときは、お助け役に登場願うのも有効です。乾燥から守るためには、加湿器やマスクの使用がよいでしょう。マスクは冷気の刺激からも守ってくれますし、花粉やほこりに対する自衛にも役立ちます。鼻の中を食塩水で洗うことも、時には有効です。