骨折や寝たきりを避ける-丈夫な骨でいきいき生活-

長い年月にわたる、不規則でアンバランスな食事、運動不足、その他生活状況の積み重ねにより、年をとってから骨が弱くなってしまうお年寄りが多くなっています。骨が弱くなったお年寄りが転倒すると骨折しやすくなり、そのまま寝たきりになるケースも少なくありません。したがって、寝たきりになるお年寄りの数を減らすための一つの対策として、骨折を防ぐことが重要であるといわれます。
骨を強くする生活習慣、そして転倒を防ぐための工夫が、いきいきとした生活を楽しむ鍵になるのです。

骨を弱くする骨粗鬆症とは

骨は加齢とともに次第に弱くなっていくものですが、日常生活に支障が出るほどまで弱くなってしまったのが骨粗鬆症です。閉経後の女性に特に多く、60代になると急激に増加していきます。背中や腰の骨に症状があらわれるのが特徴で、背骨や腰骨がつぶれて痛みを生じるとともに、身長が低くなったり、背中が丸くなったりします。
骨粗鬆症を未然に防ぐためには、骨を強くすること、すなわち食事でカルシウムを十分にとることと、運動などにより骨に適度な負荷をかけてやることが重要です。また、日光浴や食事によりビタミンDを補給する、アルコールを飲みすぎないなどの生活習慣も、骨を強くすることが分かっています。
骨折を避けるには、骨粗鬆症を予防することのほかに、転倒しにくい体づくり、住まいづくりも必要です。そのためには背中や膝を十分に伸ばして脚力を強くするとともに、階段、浴室、トイレなど、居住空間から転倒につながる要素を減らすという工夫も大切になります。

食事と栄養

どのような食生活が丈夫な骨を作るのか

骨は、たんぱく質の上にカルシウムなどのミネラルがくっついて作られていますので、丈夫な骨のためには、たんぱく質が大切な栄養素です。また、骨にはカルシウム以外にも、リン、マグネシウム、フッ素、亜鉛など、さまざまなミネラルが含まれています。したがって骨を強くするためにはカルシウムはもちろん、様々な栄養素が必要で、毎日いろいろな種類の食べ物をバランスよくしっかりと食べるということが基本になります。年を重ねるにしたがって、食が細くなって栄養のバランスが崩れがちになりますので、十分注意しましょう。

骨からカルシウムが溶け出る

カルシウムは骨の中で最も重要な成分で、私たちの体の中に存在するカルシウムの99%が骨に蓄えられています。そして骨は日々新しく作り変えられますので、男女差や年齢差はありますが、毎日の食事で600~800mg摂取しなければなりません。しかし、食事から摂取するカルシウムが不足し続けると、新しい骨になるべきカルシウムが足りなくなるだけではなく、骨に蓄えられているカルシウムも血液中にどんどん溶け出してしまいます。「丈夫な骨のためにカルシウムは大切」ということはよく知られていますが、日本人の多くはカルシウムの摂取が不十分です。カルシウムはどんな食品にもたっぷり含まれているわけではありませんので、自らカルシウムを多く含む食品を選んで積極的に摂取しないと不足してしまいます。さらに年齢を重ねると食事量が少なくなるためにカルシウム摂取量も減り、腸での吸収も悪くなってくるため、若い時よりもいっそう食事に注意することが必要になります。 カルシウムを多く含む食品の代表は牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品です。また、日本人が古くから食べている、ひじき、わかめ、のりなどの海藻、豆腐、納豆などもカルシウムを含むヘルシーな食品ですので、進んで食べるようにしましょう。また、魚の中にも、アユ、ウナギ、サンマ、アジなど、身の部分にカルシウムを多く含むものがあります。

カルシウムの多い食品
食品名 1回あたりの摂取量 カルシウム量


牛乳 1本/200cc 200mg
スキムミルク 大さじ4杯/25g 275mg
プロセスチーズ 1切/20g 126mg
ヨーグルト 1カップ/100g 110mg
アイスクリーム 1カップ/71.4g 100mg


イワシ丸干し 30g 420mg
ワカサギ 70g 525mg
煮干し 10g 220mg
シラス干し 大さじ2杯/10g 54mg
素干し桜エビ 5g 100mg
シジミ 約25粒/20g 64mg





小松菜 1/4束/95g 276mg
チンゲンサイ 76.9g 100mg
切り干し大根 20g 94mg
白いりゴマ 小さじ1杯3g 36mg
乾燥ひじき 10g 140mg
かんてん 7g 50mg
干しワカメ 2g 19mg
焼のり 5g 20mg



木綿豆腐 半丁/150g 180mg
生揚 半分/110g 264mg
凍り豆腐 1コ/20g 118mg
納豆 1パック 90m

骨を作るためのカルシウムを食事でしっかりと補給したら、次に必要なのはカルシウムを骨にくっつけるための適度な運動です。

運動が骨を丈夫にする

若い頃からあまり体を動かす習慣がなかった方、長期間の入院を経験した方などは年齢を重ねるとやせ型の体格になりやすく、骨も弱くなりがちで、骨折しやすいといわれています。ではなぜ、運動することで骨が強くなるのでしょうか。それは、運動することにより骨に圧迫する力が加わると、弱いマイナスの電気が発生してカルシウムを呼び寄せるためです。さらに、この圧迫力は骨の血流も良くし、骨を作る細胞を活発化させます。

骨を丈夫にする運動、年齢との関係

エアロビクスよりも陸上競技、陸上競技よりも重量挙げというふうに、骨にかかる負担が大きいほど、また、繰り返す動作が多いほど、骨が強くなることがわかっています。そして、60代以降の高齢者であってもゲートボール程度の運動を続けることにより、骨が強くなることが確認されています。負荷と繰り返しが骨を丈夫にするポイントですが、どの年齢の方でも体を動かすことで、骨の老化を防ぐことができますので、年齢や体力に応じて、無理なく長く続けられる運動を習慣にしたいものです。

軽めの運動でも継続が大事

1日たった25分ほどの軽めの運動でも、骨を丈夫にするには有効であることが証明されています。東京都の調べによれば、老人介護施設で生活されている141名のお年寄りの中で、日頃から散歩する習慣がある方は背中が伸びており、骨も強いということがわかりました。また散歩することで膝もよく伸び、脚力も強くなっていました。これは、歩行中にふらつきにくく、転倒しにくくなるということにもつながります。
そして、ゲートボールや散歩などの運動以外にも、家事をしたり、お孫さんの面倒を見るなど、毎日の生活に活動的な習慣を取り入れることで、骨を丈夫にしていくことができるでしょう。

日常生活で気をつけたいこと

日光浴をすると作られるビタミンD

ビタミンDは骨を作るためには欠かせないミネラルですが、食事からだけではなく、太陽に当たることで皮膚でも作られます。一日中屋内で過ごすことが多いという方は、食事から十分ビタミンDを摂取しないと、不足してしまいますので、晴れた日には一時間程度外出して日光浴をするよう心がけましょう。

胃腸の手術をされた方

胃や腸を切除した手術の後は、栄養素が不足しやすく、骨が弱くなることがありますので、栄養摂取の注意点などを主治医に指導してもらいましょう。

タバコ、アルコール、コーヒー

タバコは骨を弱くしてしまうことが知られています。また、アルコール、コーヒーの過剰摂取も骨を弱くしますので、飲み過ぎを避け、バランスの良い食生活を心がけましょう。

専門医に相談

性腺の働きが弱くなっている男性や閉経後の女性、高齢者の方は骨が弱くなって腰痛や骨折が起こりやすい傾向があります。また、月経が比較的早く止まったり、卵巣を摘出する手術を受けた女性も要注意です。定期的に専門医を受診し、骨の老化を防ぐ治療が必要だと診断された場合は、骨折などを起こしてしまう前に早めの治療をするようにしましょう。

転倒の防止

家庭内での事故

本来安全であるはずの住宅でも、体力が衰えた方や身体に何らかの障害のあるお年寄りにとっては、思いがけない事故につながる要素が点在します。50代以上の中高齢の方々を対象とした家庭内事故の調査によると「転倒」「転落」が一番多く、それをきっかけにして寝たきりや認知症につながりやすい骨折の発生率は50代では5%程度と低いものの、80代では約15%と多くなっています。

転倒を防ぐために

同じ階には可能な限り段差が生じないようにしましょう。やむを得ず段差ができてしまう場合には、高さの違う床は色を変える、照明で照らして段差の存在をわかりやすくなるなどしましょう。また、和室と洋室の境界にある段差には市販のスロープを設置する、浴室と脱衣室の境界にある段差にはすのこを敷くなどし、なるべく段差を小さくする工夫をしましょう。そのほか、階段、トイレ、浴室、寝室などにも転倒につながる危険要素が存在します。手すり、足元を照らす照明器具等を設置したり、滑りにくい素材の床仕上げにするなどし、不慮の事故を未然に防ぐ配慮をしましょう。
転倒や転落の事故は移動中に最も多く発生しており、その目的の第一位はトイレです。したがってトイレはできる限りお年寄りの居室に近い場所に設けることがポイントになります。そして居室に隣接してトイレ、洗面脱衣所、浴室を設けることができれば理想的です。

寝たきりゼロ10か条

誰も自ら寝たきりになりたいとは思っていません。しかし、現実には100万人を超える多くの寝たきりの方々がいます。骨折による寝たきりを防ぐために、次の10か条に留意した生活を心がけましょう。

  1. 脳卒中と骨折予防 寝たきりゼロへの第一歩
  2. 寝たきりは寝かせきりから 作られる 過度の安静 逆効果
  3. リハビリは 早期開始が 効果的 始めようベッドの上から訓練を
  4. くらしの中での リハビリは 食事と排泄、着替えから
  5. 朝おきて 先ずは着替えて 身だしなみ 寝・食分けて 生活にメリとハリ
  6. 「手は出しすぎず 目は離さず」が介護の基本 自立の気持ちを大切に
  7. ベッドから 移ろう移そう 車椅子 行動広げる 機器の活用
  8. 手すりつけ 段差をなくし 住みやすく アイデア生かした 住まいの改善
  9. 家庭でも社会でも よろこび見つけ みんなで防ごう 閉じこもり
  10. 進んで利用 機能訓練 デイ・サービス 寝たきりなくす 人の和 地域の輪