知っておきたい-循環器の病気-

日本人の死因は第1位ががん、第2位が心疾患、第3位が脳卒中などの脳血管疾患ですが、第2位と第3位を循環器の病気が占めています。こうした循環器の病気は日常生活の中で静かに進行するため、症状が現れにくく軽視されがちです。
循環器の病気を引き起こす危険因子は明らかになっています。塩分や脂肪分のとり過ぎ、アルコールの飲み過ぎ、喫煙、運動不足などがよく知られていますが、こうした悪い習慣を改善することが循環器病の予防や治療につながりますから、食生活の改善、禁煙、適度な運動を心がけるなど、健康的な生活習慣をどう実践するかがとても大切だといえます。

予防は自分次第

生活習慣というものを考えると、それまでは健康だったのに、ある日突然病気になるということはありません。若いころからの日常生活の過ごし方や特定の生活習慣の繰り返しの中から病気の根がだんだん広がっていき、あるレベルに達すると症状が出てくるということが多いものです。
老年病といわれるものも、高齢者になったから病気になるのではなく、若いときからの長期間にわたる「悪い習慣」の積み重ねによって病気は始まっているのですが、自覚症状がないために気がつかずに過ぎてしまい、高齢者になったときに症状が現れてくるものが多いのです。
生活習慣病は、かかってからあわてて治療を受けるより、病気にならないような行動、習慣を身につける努力をしなければいけません。生活習慣病とは中高年につきものの病気ではなく、自分の生活習慣がつくる病気、裏返せば自分次第で予防ができる病気であるということをしっかりと頭に入れておいていただきたいものです。

死の四重奏

高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満が重なると、動脈硬化などの危険が著しく高まるため、この4つを「死の四重奏」と呼ぶことがあります。いずれも脂肪をはじめとするエネルギーの過剰、塩分の過剰摂取などの食生活や、運動不足といった生活習慣が原因となります。したがって「死の四重奏」は、ライフスタイルを改善することによって回避することが十分可能なのです。

糖尿病

糖尿病とは

糖尿病はブドウ糖を燃やすために必要なインスリンが全身で働きにくくなったり、ブドウ糖の量に対してインスリンの量が足りなくなるために、血液に含まれるブドウ糖の量が異常に多くなる(血糖が高くなる)状態で、平成19年の国民健康・栄養調査によると、「糖尿病が強く疑われる人」の890万人と「糖尿病の可能性を否定できない人」の1,320万人を合わせると、全国に2,210万人いると推定されています。
糖尿病の中には、ほとんど生活習慣と無関係に発症する1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)もありますが、大多数は生活習慣が大きく発症に関与する2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)です。
1型糖尿病というのは、インスリンの分泌がほとんどないためにインスリンを必要とするもので、10代を中心に急激に発症し、ケトアシドーシス昏睡(血液が酸性に傾いて意識を失う)を起こしやすい糖尿病です。
これに対して、中高年層や肥満者に起こりやすいのが2型糖尿病で、治療に必ずしもインスリンを必要とせず、飲み薬や生活習慣の改善が有効で、ゆっくり発症することの多い糖尿病です。どの年齢にも発症しますが、特に40歳以上の人や体型が肥満型の人に多く、日本人の糖尿病のほとんどを占めるのが2型糖尿病です。誘因としては肥満、運動不足、ストレスなどがあげられます。

放置すると怖い合併症

糖尿病は血管の病気であるといわれますが、合併症においても動脈硬化や心筋梗塞など、血管に症状が多く出ます。また、末梢神経障害など、神経に症状が現れることも多いほか、長い経過のうちに全身どこにでも合併症は起こります。糖尿病が怖いのは糖尿病自体での死亡は少なくても、合併症で死亡することが多い、ということなのです。
このように糖尿病は大変な病気であり、他の病気の危険因子でもあります。予防・重症化防止のためには血糖値を適切な値に保つことが最も重要です。糖尿病という病名から糖分を控えることのみを食事療法と誤解している人がいますが、摂取する総カロリーを制限し、脂質、たんぱく質、糖質のバランスをよくすることが食事療法の基本です。

糖尿病の合併症

眼…網膜症、白内障、緑内障 呼吸器…感染症、感冒肺炎、肺結核 腎臓…腎症 泌尿器…インポテンツ、尿路感染症、膀胱炎、排尿障害 脳…動脈硬化、脳梗塞 心臓…動脈硬化、心筋梗塞 皮膚…皮膚病、感染症 神経…顔面神経マヒ、末梢神経障害

高血圧症

高血圧症とは

血圧は健康な人でも絶えず変動しています。心臓や血管が正常であれば一時的に血圧が上昇しても心臓や血管は傷まず、特に問題となることはありません。ところが、高い血圧がずっと続くとポンプ役をする心臓と、高い圧力にさらされている動脈に負担がかかり、その結果、心臓が肥大したり、あるいは動脈が硬くなってきます。この状態を高血圧症といいます。
高血圧症でやっかいなことは、特別な自覚症状がないうちに徐々に進行し、ついには心臓が弱って「ポンプ」として十分にはたらくことができなくなってしまう心不全に陥ったり、動脈の破裂を引き起こしたりすることです。
とりわけ脳動脈の一部は高血圧で壁が破れやすくなり、脳血管障害を引き起こします。また、腎臓の動脈に障害が出ると腎機能の低下をきたし、腎硬化症に陥ります。そして、高血圧症の重傷度は、これら合併症の有無や程度で決められます。

健康管理は「血圧管理」から

高血圧は塩分のとり過ぎ、アルコール類の飲み過ぎなどによってその発症を早めたり症状を悪化させたりしますので、このような生活習慣には十分な注意が必要です。また、ストレスによっても血圧は上がりますので、日頃から上手にストレスを解消する工夫をしましょう。
高血圧症の降圧療法はいってみれば対症的な療法といえますが、高血圧の治療は単に血圧を下げることだけでなく、血圧管理を通して健康管理をするものだと考えていただきたいと思います。

高血圧の基準

血圧は心臓が縮んだときと広がったときとでは大きく違います。心臓が縮んだときの血圧を収縮期血圧(最大血圧)、心臓が広がったときの血圧を拡張期血圧(最小血圧)といいます。
成人における血圧値の分類(2009年/日本高血圧学会)は下の表のとおりです。収縮期血圧と拡張期血圧が別の分類に属するときは、高い方の分類に該当します。理想的な血圧は収縮期血圧120mmHg未満、拡張期血圧80mmHg未満とされています。

成人における血圧値の分類
分類 収縮期血圧(mmHg)   拡張期血圧(mmHg) 
至適血圧  120未満  かつ  80未満 
正常血圧  130未満  かつ  85未満 
正常高値血圧  130~139  または  85~89 
1度高血圧  140~159  または  90~99 
2度高血圧  160~179  または  100~109 
3度高血圧  180以上  または  110以上 
(孤立性)収縮期高血圧  140以上  かつ  90未満 

高脂血症

高脂血症とは

血液中の脂質にはコレステロール、中性脂肪(トリグリセリド)がありますが、このどれかが異常に増えている状態を高脂血症といいます。高脂血症は動脈硬化の最も大きな危険因子です。
ひとくちにコレステロールといっても、すべてのコレステロールが悪いわけではありません。コレステロールは一般に動脈硬化の元凶と考えられて悪者扱いされていますが、元来コレステロールは私たちの体をつくるのに必要な脂肪の一種なのです。コレステロールは大きく分けると、動脈硬化を進めてしまう「悪玉コレステロール(LDL-コレステロール)」と動脈硬化を抑えるはたらきをする「善玉コレステロール(HDL-コレステロール)」があります。悪玉コレステロールが血液中に増えるとそれが動脈壁に付着してその部分の弾力性を低下させ、動脈硬化を促進させてしまいます。反対に善玉コレステロールは血管壁をはじめとする組織の細胞にたまり過ぎた悪玉コレステロールを拾いだして肝臓に戻すはたらきを持っています。したがってコレステロール量を正常に保つと同時に、善悪2種類のバランスを考慮することが、健康管理には大切なのです。

太り過ぎに注意

高脂血症は一次性高脂血症と二次性高脂血症に分類されます。一次性高脂血症は遺伝によるもので、生まれつきコレステロールが利用できません。二次性高脂血症は糖尿病に伴うもの、腎臓や肝臓の病気により起こるものなどがありますが、肥満に伴う高脂血症も二次性高脂血症です。それぞれに合った食事療法や薬物療法がありますが、中性脂肪と肥満には密接な関係があることから、太っている人は体重を減らすだけで高脂血症が改善されることがあります。日頃からの健康管理として、油っこい食事を改め、適度な運動を心がけて太り過ぎないように注意することによって、高脂血症を予防することができます。また、定期的に検診を受け、下の表を参考にして検査値に注意するようにしましょう。

こんな数値が出たら注意が必要

血清総コレステロール…220mg/dl以上 中性脂肪(トリグリセリド)…150mg/dl以上 LDL-コレステロール…140mg/dl以上 HDL-コレステロール…40mg/dl未満

脳卒中

脳卒中とは

がんや心臓病とともに三大生活習慣病としてよく知られている脳卒中は日本人の死因の上位を占めており、発症する人が毎年増えています。脳卒中は脳の血管がつまったり破れたりして起こるもので、たとえ命を取り留めたとしても後遺症として片側の感覚障害や言語障害が残って日常生活に不自由をきたすことが多い、大変恐ろしい病気の一つです。

脳卒中の種類

脳梗塞

脳には多数の血管がはりめぐらされていて、その中を流れる血液から酸素や栄養を受けとっています。その血管の一部がつまると、そこから先へ血液が流れなくなりますから、その部分の脳がはたらかなくなってしまいます。これが脳梗塞で、近年日本人に増えてきています。
そのつまり方は2種類あり、一つは脳の血管が動脈硬化を起こして細くなり、血液の流れが途絶えてしまう場合です。これを脳血栓といいます。そしてもう一つは心臓でできた血液のかたまりが脳の血管につまってしまう場合で、これを脳塞栓といいます。血管のつまる部位などによりいろいろな症状がみられ、軽いものから重いものまであります。片側の手の握力が弱くなったという程度のものから、半身不随という重いもの、また言葉を話すことができないなどの症状がみられることもあります。

脳出血

動脈硬化によって脳の血管がもろくなっているとき、血圧が高くなると動脈が急に破れて脳の中で出血を起こすものです。多くの場合、突然意識を失って倒れ、深い昏睡とともに半身のマヒが起こります。

くも膜下出血

脳は「くも膜」という膜に覆われていますが、くも膜と脳の表面との間にある小さな動脈にこぶ(動脈瘤)があると、血圧が上がったときなどに突然破れて出血を起こすことがあります。これがくも膜下出血で、突然激しい頭痛が起こって意識を失ったり、昏睡状態に陥ります。

一過性脳虚血

脳の血液循環が一時的に悪くなり、めまい、失神、発作などを引き起こします。少し横になっていれば治まりますが、脳梗塞の前駆症状とも考えられており、特に高齢者では十分な注意が必要です。

虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)

虚血性心疾患とは

虚血性心疾患は心臓病のひとつで、心臓を養う血管(冠動脈)が動脈硬化によって細くなり、最終的には閉塞して心臓の筋肉(心筋)に血流が届かなくなって、その部分の心筋が機能を失う病気です。

虚血性心疾患の種類

心筋梗塞

心臓を取り囲んでいる冠動脈という血管は、心臓に酸素やエネルギーを供給しています。動脈硬化が進んだり、血が固まりやすくなっていると、この血管から酸素の供給を受けている心臓が機能を失ってしまいます。このように、酸欠状態が長く続き心筋の一部が壊死してしまうのが心筋梗塞です。心筋梗塞になると全身に血液を送り出す力が弱くなり、ひどくなると血圧が下がって命にかかわることがあります。また心臓の動きが不規則になることがあり、これも命にかかわる症状です。

狭心症

心筋梗塞までいってしまうと重症ですが、血管が狭くなっている状態で運動や仕事、強いストレスにより心臓に負担がかかったとき、一時的に酸素やエネルギーが不足して、胸の痛み、息切れといった症状が起こるのが狭心症です。この段階では痛みの発作が過ぎれば心臓の機能はもとに戻ります。
胸痛発作は狭心症の代表的なサインです。みぞおちが締めつけられるように痛むのが特徴で、首から左腕の内側にも痛みが広がることもあります。発作が10分以上続くようなら「心筋梗塞」の疑いもあります。

虚血性心疾患の主な要因

虚血性心疾患を引き起こす危険因子は、主なものとして高脂血症、高血圧、喫煙、糖尿病、遺伝的要因、肥満、運動不足、痛風、ストレスの多い生活などが明らかにされています。中でも高脂血症、高血圧、喫煙、糖尿病は四大危険因子とされています。
虚血性心疾患を予防するためには食生活を改善することが大切です。特に摂取エネルギーが過剰にならないようにすること、動物性脂肪を控えることなどを心がけましょう。また、運動をしないと循環器のはたらきが悪くなりますので、適度な運動も心がけたいものです。

心筋梗塞と狭心症の違い

心筋梗塞

胸痛の特徴…締めつけられるような激しい痛み。不安感、重症感がある。 発作の持続時間…15分以上。数時間続くこともある。

狭心症

胸痛の特徴…突然、締めつけられるような重苦しさ、圧迫感がある痛み。 発作の持続時間…1~5分程度で、長くても15分以内。

脳血管性認知症

認知症とは

加齢に伴う脳の病気として認知症があげられます。認知症とは、ただ単に物忘れをしやすくなることをいうのではなく、物忘れがひどく、相手が誰かさえ認識できなくなって社会生活をすることが困難になる状態をいいます。そして一度発症してしまうと、本人はもとより、家族にも大きな負担を強いることになります。

認知症の種類

認知症は、医学的には老人性認知症といいます。わが国の患者は270万人もいると推定されており、脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症の2つに分類されます。
脳血管性認知症は脳の動脈硬化、梗塞によって脳の血流が妨げられるため、脳細胞の機能が低下することが原因です。一方、アルツハイマー型認知症は脳が萎縮するために起こります。早い例では40~50代でもみられますが、その原因はいまだに不明な点が多いようです。

脳血管性認知症の症状と治療

脳血管性認知症の症状としては、アルツハイマー型認知症と同様に記憶障害や判断力の低下などの障害があげられますが、症状が段階的に悪化したり、症状の程度が変動したりするのが特徴といえます。半身マヒや歩行障害、言語障害などの身体的症状を伴うことも少なくありませんが、アルツハイマー型認知症と違ってある程度予防が可能です。脳血管性認知症は早期に発見することによってその進行をくい止めることもできるのです。
脳血管性認知症の治療では、脳血管障害の再発・悪化の予防と対症療法を行います。高血圧や高脂血症などの危険因子の治療や、必要に応じて血液を固まりにくくする薬を用いることによって再発を防止したり、脳の代謝を改善させる薬や脳血管拡張剤など、脳の循環を改善させる薬も用いられます。しかし、それにも増して重要なことは、脳血管障害の予防にあるのです。

認知症の2つのタイプ

脳血管性認知症

原因…脳出血や脳梗塞による脳の血流障害
予防のポイント…高血圧・糖尿病・高脂血症を避け、血管の動脈硬化を予防する。タバコ・ストレス・運動不足・肥満を避ける。

アルツハイマー型認知症

原因…不明
予防のポイント…予防法は確立していないが、次のことを避けたほうがよい。
●休日など寝て暮らす。●無趣味で、老後何もしない。●若いときから運動をしない。

認知症防止のために

脳血管疾患の危険因子は高血圧や糖尿病、高脂血症、動脈硬化といった生活習慣病と密接に関連しています。つまり、生活習慣病の予防が認知症の予防にもつながりますので、食習慣をはじめ、若いころからのきちんとした健康管理が大切といえます。

高脂血症、高血圧、動脈硬化の予防

「認知症」の直接的な原因となる病気は脳梗塞で、この脳梗塞を生じやすくさせるのが高血圧や動脈硬化です。これらの予防には血管の老化を防ぎ血流をよくすることが大切で、そのためのポイントとしては肥満の防止、適度な運動、食塩を控えめにする(1日10g以下に)、ストレスの解消、禁煙などがあげられます。

食生活

食生活のあり方も認知症を予防するうえで大切です。食事のとり方で心がけたいことは、栄養バランスのとれた食事(いろいろな食品を食べることが大切です。1日30品目を目標に)、魚や大豆製品を多く(肉も大切なたんぱく源ですが、たくさん食べると動物性脂肪のとり過ぎになります。魚や大豆製品を多くとりましょう)、野菜をたっぷり(野菜には身体の調子を整えるビタミンが豊富です)、アルコールは適度に(アルコールの飲み過ぎは認知症の原因ともなります。1日ビールなら2本、日本酒なら2合まで。また、休肝日を必ずもうけましょう)牛乳、乳製品、小魚、海藻を多く(カルシウムは老化防止に役立ちます。積極的にとりましょう)、などです。

脳を若く保つために

認知症を予防するには頭や体をはたらかせることがとても大切です。積極的で生きがいのある生活が最良の予防薬なのです。そのために次のことを心がけましょう。

  1. 散歩やジョギングなど、体力に応じた運動を日課としましょう。
  2. 自分のことは自分でする習慣をつけましょう。
  3. できるだけ頭を使いましょう。囲碁・将棋は頭と同時に指先を使うため認知症防止に役立つといえます。また、本を読んだり、物を書いたりする習慣も身につけましょう。
  4. 趣味を持ち、人づきあいを活発にしましょう。
  5. 生きがいを持ちましょう。引っ込み思案にならず、前向きな目標や、家族や仲間の中で自分の役割を見つけることが大切です。