生活習慣病予防のために-血液を健康に保つ-

私たちの体内に流れている血液には、その人の生活習慣や健康状態が反映されています。血液の状態が悪くなれば、心疾患や脳血管疾患といった重い病気の危険性が増し、認知症や寝たきりにもつながっていきます。血液は体の外からは見ることができませんが、生活習慣に注意しながら良い血液状態を維持することで、病気を予防して健やかな生活を送ることができるのです。

血液で生活習慣がわかる

健康診断を受けたときや体調不良の原因を調べるときに血液検査を行うことからもわかるように、血液は外からは見えない体の異常を知るためのバロメーターです。自覚症状がわかりにくい糖尿病や脂質異常症も、定期的な血液検査によって早期発見できます。
血管壁が厚く硬くなって弾力性を失う動脈硬化は、不規則な食生活や脂質・糖質過多の偏った栄養、運動不足、睡眠不足、ストレス、喫煙といった好ましくない生活習慣により引き起こされます。
動脈硬化には自覚症状がありませんが、血液の中では糖やコレステロール、中性脂肪が増加しており、生活習慣を改善しなければ糖尿病、高血圧症、脂質異常症や肥満につながっていきます。このような状態が続くと動脈硬化が進行して心疾患や脳血管疾患など命に関わる病気になるリスクが高まり、認知症や寝たきりに発展してしまうこともあります。
そのような事態を避けるためにも、日頃から血液と血管を健康に保つことが大切です。健康診断や血液検査を定期的に受け、血液からわかる体の異常を早くキャッチできるようにしましょう。

日本人のコレステロール値

戦後、日本人の生活が欧米化し、食生活も変化した結果、体形にも変化があらわれ、肥満も増加しました。1970年から1990年頃にかけて国民の血中コレステロール値が上昇、2000年にはアメリカ人と肩を並べるまでになり、2010年にはアメリカを超えています。アメリカは国を挙げてコレステロール値の低下に取り組んでおり、その成果で平均値は徐々に下がってきていますが、日本人の平均値は上昇を続けているのです。1980年代のアメリカでは、日本では比較的少なかった心筋梗塞や狭心症の患者が非常に多かったそうですが、このままでは今後の日本がそのような状況になってしまうことも十分考えられます。
また、脳の血管障害が原因で起こる脳血管性認知症には、高血圧や糖尿病が関与していることがわかってきています。認知症を防ぐためにも、血液の状態を健康に保つ生活習慣を心がけましょう。

食生活の改善

糖質や脂質が過剰な食生活が血糖値や中性脂肪値、コレステロール値を上昇させると知識としは理解していても、私たちの脳は甘いものや脂っこいもの、塩辛いものを美味しいと感じるようにできているため、毎日の食生活を改善するのはなかなか難しいものです。糖質や脂質は人体にとっては必要不可欠な栄養素ですから、量を制限するというよりも内容を見直すという意識を持つといいでしょう。
理想的なのは野菜、魚、豆類、発酵食品など昔ながらの日本食。特に魚と大豆には生活習慣病を予防する効果があることがわかっています。そして伝統的な日本食をベースにした食事はジャパンダイエットとして脂質異常症などの治療にも活用されています。

食物繊維で糖質の吸収を緩やかに

日本人などのアジア系人は、遺伝的に糖尿病になりやすい体質だといわれています。そのため、糖質の摂りかたには注意が必要。特にお菓子やジュースなどに含まれる砂糖を主体とした単純糖質は白米、麺類といった複合糖質に比べて血糖値が上がりやすいため摂りすぎないようにしましょう。
また、メタボリックシンドロームの診断基準のひとつにもなっている腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上の方は内臓脂肪が多く、糖尿病にもなりやすいとされています。このような場合はご飯の量を減らし、食物繊維が豊富な野菜や海藻を積極的に食べるようにしましょう。食物繊維は糖質の吸収を緩やかにし、急激な血糖値の上昇を抑えてくれます。

n-3系脂肪酸で動脈硬化を予防

脂質の摂取はバター、ラードといった動物性脂肪の飽和脂肪酸を減らし、魚油や植物性脂肪の不飽和脂肪酸を多く摂るようにしましょう。この不飽和脂肪酸のうち、魚油に含まれるDHA・EPAや亜麻仁油などの「n-3系脂肪酸」は日本人に不足していて動脈硬化に効果のある脂肪酸ですので、日頃から進んで摂取したいものです。
また、オリーブ油には動脈硬化の原因にもなる悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を減らしてくれる働きがあるといわれており、オリーブ油と魚介や野菜をふんだんに用いる地中海料理は、動脈硬化に有効な食事として世界的に知られています。
その一方で摂取量を減らしたいのがマーガリンやショートニングなどに含まれているトランス脂肪酸です。トランス脂肪酸は血管に対して毒性があることもわかっていますので、加工食品は原材料を確認して購入するようにしましょう。

肥満と塩分摂取

塩分の摂りすぎが高血圧を引き起こすのはよく知られていますが、最近の研究でメタボリックシンドロームにもつながるということがわかってきました。詳細なメカニズムまでは判明していませんが、男性は塩分の摂取量が多いほどメタボリックシンドロームになりやすいという統計が出ています。一方女性は野菜や果物で補うことのできるカリウムが不足がちな人ほどメタボリックシンドロームになりやすいようです。

食事で予防するフレイル

フレイルとは、加齢とともに筋力や活動量が低下している虚弱状態のことで、寝たきりの手前の段階です。このフレイルを予防することが健康寿命を伸ばすことにつながるとして近年注目されています。食事においては筋肉量を維持するためのタンパク質の摂取が不足しないように注意しましょう。

加齢とともに適度な食事量は変わっていく

糖質や脂質の摂取のしかたは年代によって変わっていきますが、特に注意が必要なのは40代~50代の方です。この年代では男女ともに性ホルモンの分泌量が低下して体に脂肪がつきやすいため、生活習慣病にかかる危険性も高くなってきます。
一方で成長期の子供や、食事量の減少とともに栄養不足になりやすい高齢者の方は糖質や脂質の制限を意識しすぎると健康を害してしまうこともあります。子供は成育のために、高齢者はフレイル予防のために糖質、脂質、タンパク質をバランスよくしっかり摂ることが大切です。

食事は1日3食

近年になって増えている朝食の欠食は、男女とも20代が最も多いことがわかっています。朝食を抜くのは、前の日に食べ過ぎたりお酒を飲みすぎたりしたなど、生活習慣や食生活の乱れが原因であることが多いもの。朝食を毎日食べないという人は1日3食食べる人に比べてメタボリックシンドロームになる危険性が高いとされていますので、生活習慣病予防のためにも食事は1日3回しっかり摂りましょう。

体を動かす習慣をつける

血液の状態を良好に保つためには、運動も大切です。
体内の糖の約7割は筋肉で消費されていますので、筋肉量が減少すれば血液中には糖分が過剰になってしまいます。筋肉量の増加や維持は糖尿病を予防することにもつながるのです。
また、筋肉は動脈硬化の予防にも関係しています。筋肉が増えれば血液の量も増えて善玉コレステロール(HDLコレステロール)が増加。HDLコレステロールは血液中や血管壁に蓄積した余分なコレステロールの掃除をして動脈硬化を防いでくれます。この値が低い低HDLコレステロール血症の状態になると脂質異常症と診断されます。
忙しい毎日の中で運動する時間を作るのは難しいものですが、運動によって筋肉を増加・維持することでさまざまな恩恵がありますので、まずは週に1回の運動習慣をつけるようにしましょう。ウォーキングやジョギングといった有酸素運動と筋肉トレーニングを組み合わせて行うのがポイントになります。

上手にストレス解消

ストレス状態が続くようになると血糖値を上げる作用があるアドレナリンやコルチゾールといったホルモンが分泌されやすくなり、それとは逆に血糖値を下げるためのインスリンの働きが低下してしまいます。このようなホルモンバランスの乱れが血糖値などに悪影響を及ぼすことによって生活習慣病が引き起こされるようになるのです。
ストレス解消法は人それぞれですが、おすすめなのはやはり運動です。運動は筋力の維持・増強という肉体面のメリットだけではなく、気持ちの良い汗を流した爽快感という精神面でのメリットもあります。仕事がある平日などに運動することはなかなか難しい場合もあるかと思いますが、少しずつでもいいので体を動かす習慣をつけていきましょう。

タバコ

よく「百害あって一利なし」といわれるように、タバコには体に有害なさまざまな成分が含まれています。また、タバコが燃えて発生する一酸化炭素が体内に入れば悪玉のLDLコレステロールや中性脂肪が増加してしまいますし、1本吸うと血圧が10~20mmHg上昇するといわれ、動脈硬化のリスク要因にもなります。さらに1日10本以上吸う場合は脂質異常症やメタボリックシンドロームの危険性が高まるともいわれています。
最近では禁煙外来がある医療機関もありますし、薬局などでも禁煙するためのパッチやガムなどが販売されています。喫煙習慣がある方は1日も早くタバコをやめることをおすすめします。

睡眠時間と生活習慣病

睡眠と生活習慣病は密接に関連しています。たとえば、睡眠時間が不足すればインスリンの働きが低下して糖尿病になる危険性が高まりますし、高血圧症になるリスクも高くなります。
また、睡眠時間が不足すると食欲を増すホルモンが増加して満腹感を得るホルモンが減少するため、食べすぎを助長することに。実際に、睡眠時間が不十分な人は肥満になりやすいという報告もあります。
適度な睡眠時間の長さは年齢などによって人それぞれであり、季節によっても変化しますが、毎日6~7時間の睡眠をとっていれば生活習慣病の危険性は低くなるということです。朝の目覚めが良く、日中に眠くなることがなければ、睡眠の質もよいといえるでしょう。

血液検査を受けましょう

血液の変化は自分ではわかりにくく、血糖値やコレステロール値、血圧が基準値を上回っていたとしても、自覚症状はほとんどありません。ですから、定期的に健康診断を受けて血液検査を受けることが健康維持や病気の早期発見にとって大切になります。
勤務先で健康診断が受けられない主婦や自営業の方は健康診断の受診率が低い傾向がありますが、地域の特定検診などを受け、定期的に血液の状態を調べたほうがいいでしょう。最近では薬局などで血液検査キットを購入し、郵送で診断してくれるサービスなどもありますので、忙しくて医療機関に行けないという方は活用してみてはいかがでしょうか。