ストレスやピロリ菌が原因-胃のトラブル-

胃は空腹時には縮んでいますが、食べ物が入ってくると広がって、およそ1.5~2.5リットルほどの食べ物を貯めておくことができます。この食べた物を一時的に蓄える貯蔵機能のほか、胃にはぜん動運動により食べた物を粥状にする消化機能、胃液を分泌してウイルスや細菌などの異物を退治する殺菌機能もあります。

胃の状態チェック

以下の項目に当てはまるものが多いほど、胃がトラブルを起こしやすい状態です。すぐに自分で改善できるものは改善し、日頃から胃に負担をかけない生活を心がけましょう。

緊張しやすい、緊張する場面が多い
イライラしやすい
疲れがたまっていると感じる
よく眠れないことがある
気分転換できる趣味や楽しみがない
食生活が不規則になっている
お酒をよく飲む
たばこを吸う
揚げ物などの脂っこいものをよく食べる

ストレスと胃のトラブル

胃はストレスの影響を受けやすい臓器で、ストレスがかかると機能が低下したり胃粘膜が弱くなったりして、さまざまな症状があらわれます。
ストレスが原因となって起こる胃のトラブルには、胃の粘膜に炎症が起きる急性胃炎、胃そのものに異常がないのに不快な症状が出る機能性ディスペプシア、胃や十二指腸の粘膜がえぐれて潰瘍ができ、悪化すると胃に穴があくこともある胃・十二指腸潰瘍などがあります。
ストレスが原因で胃にトラブルが起きると、その症状自体がストレスになります。そして症状によるストレスがさらに胃の状態を悪化させるという悪循環に陥ってしまいますので、早めの対処が重要です。
胃の状態は心や体の健康状態を映し出す鏡といえます。特に春先は新生活がスタートして環境が変化することが多いためにストレスが増えがちになります。胃を健康に保つためにも日常生活や習慣を見直し、ストレスが過剰にならないような工夫をしていくことが大切です。

胃炎の症状

胃のトラブルの中で最も多いのが胃炎です。胃の粘膜が炎症を起こしてただれたり、はがれたりすることによって、みぞおちがキリキリする、吐き気、食後の胃の痛み、もたれや胸やけ、食欲不振、げっぷといったさまざまな症状が出てきます。
これらの症状は、突然痛みなどが起こって2~3日で治まる場合と、なんとなく胃の調子がすぐれないという状態が長期間続く場合とがあります。
ただし、急激に起こるみぞおち辺りの痛みは、胃炎ではなく心筋梗塞などの病気でも起こりますし、空腹時の痛みは潰瘍ができていることもあります。数日しても症状が改善しないときは早めに医療機関を受診しましょう。

ストレスで胃炎が起こる仕組み

胃液分泌、ぜん動運動などの胃の機能は、自律神経によってコントロールされています。自律神経は交感神経と副交感神経からなり、お互いにバランスを取り合っていますが、ストレスがかかるとこのバランスが崩れて胃がダメージを受けてしまうのです。
ストレスの刺激が交感神経に伝わって交感神経が優位になると、胃の血管が収縮して血流が滞ります。さらにぜん動運動が抑えられて胃液分泌が減り、胃の保護機能が低下します。そして交感神経優位の状態を立て直すために副交感神経が優位になると、ぜん動運動が活発になり、胃液分泌が増えて胃酸過多になり、胃を過剰に刺激します。また、ストレスで副腎皮質ホルモンの分泌が高まると、胃粘膜の抵抗力が下がってしまいます。ストレスを感じるたびにこのような状態を繰り返すことによって胃粘膜がダメージを受け、急性胃炎が発症します。
また、食べ過ぎや飲み過ぎ、脂っこいものが多い偏った食生活も胃酸過多の原因になるほか、ピロリ菌によって胃炎が起こるということも指摘されています。 ピロリ菌は胃粘膜に棲み付く細菌で、アンモニアや毒素などを発して胃粘膜の機能を低下させます。阪神・淡路大震災や東日本大震災の後、被害や避難生活によってストレスを受けて胃・十二指腸潰瘍を発症する方が急増しましたが、その中でもピロリ菌に感染している方の発症率が高かったということです。
ピロリ菌感染者は、長期間の慢性的な胃の症状に慣れて自覚症状を感じない場合が多く、健康診断を受けたときに初めて胃炎と診断されることも多くあります。したがって、胃のトラブルを未然に予防するために、自覚症状のあるなしに関わらずピロリ菌検査を受け、感染しているかを一度確認しておくことをおすすめします。

機能性ディスペプシアとは

胃の不快な症状があって検査を受けても炎症や病気が見つからないというケースもあり、このような状態は機能性ディスペプシアと呼ばれています。自律神経の働きが乱れると胃の機能が低下する「運動機能異常」や、胃が胃酸の刺激に過剰に反応する「内臓知覚過敏」になり、胃に炎症などがなくても胃もたれや胃痛、少し食べただけでも満腹になる早期膨満感といったさまざまな不快症状が出てきます。
機能性ディスペプシアの治療は症状に応じた薬で行いますが、多くの人が睡眠不足、食生活が不規則で野菜不足という生活習慣を送っているようです。症状の改善には薬による治療とともに、こうした習慣を見直すことも重要でしょう。

子供にも起こる胃の不調

子供もストレスを受けることで腹痛や嘔吐などを起こすことがあり、弟や妹が生まれたり、新学期が始まったりして周囲の環境が変わったときに発症しやすくなります。実際には明確な病名として診断されないことが多いですが、胃の機能に異常がある場合もあります。
保護者の方は会話やスキンシップで子供に安心感を与え、ストレスを軽減してあげるようにしましょう。それでも数日で症状がよくならないようであれば、医療機関を受診しましょう。

胃にやさしい食生活

胃の調子が良くないときは、まず胃にかかる負担を軽くしてあげるのが先決です。お粥やスープ、ヨーグルトといった消化の良いものを食べ、消化に時間がかかる脂っこいもの、熱過ぎたり冷た過ぎるものは避けるようにしましょう。また、香辛料やカフェイン、アルコールなど刺激が強いものは胃粘膜にダメージを与えますので、要注意です。
下痢や嘔吐がある場合は無理に食事を摂らず、脱水症状を防ぐため常温の水分をこまめに補給しましょう。

胃をいたわる生活習慣

胃の不調を予防・改善するためには、普段から胃に負担をかけない生活習慣を心がけること、ストレスによる胃へのダメージを防ぐために、運動や趣味を楽しむ時間を作ることが大切です。
睡眠不足は自律神経のバランスを崩す原因になり、胃の不調を招きますので、十分な睡眠時間を確保するようにしましょう。また、生活リズムが不規則になると自律神経のバランスが乱れますので、起床時間、食事時間、就寝時間などはある程度一定にしたいものです。食事は食べ過ぎや飲み過ぎ、刺激物を避け、胃に過度な負担をかけないようにしましょう。
たばこは胃の血流を妨げ、胃粘膜の抵抗力や胃の機能を低下させますので、胃の調子にかかわらず禁煙するのが基本です。

市販薬の活用と医療機関受診

市販の胃薬には胃酸の分泌を抑えるもの、消化を助けるもの、漢方系のものなど、たくさんの種類があります。お店で薬剤師や登録販売者に相談し、自分の症状に合ったものを選んでもらうとよいでしょう。いつから、どのような症状が、どのくらいの頻度で出ているか、症状は悪化してきているか、何か考えられる原因はあるか、といったことを伝えることで薬選びがスムーズになると思います。また、普段から市販薬を飲んでいる場合はそのお薬の名前を伝え、病院の薬を飲んでいる方はお薬手帳を持参するなどしましょう。
そして生活習慣の改善をしながら市販薬をしばらく使用しても症状が良くならない場合や、症状が強くなっていく場合などは、胃以外の病気が不調の原因になっていることもあるので、早めに医療機関を受診しましょう。