60代の半数が抱える-夜間頻尿の悩み-

「夜トイレに起きてしまう」という方は年齢とともに増加し、60歳を超えると実に半数近くの人が夜間頻尿に悩まされているといわれています。
若い人であればトイレの回数は日中で4~7回ほどで、寝ている間はほとんどトイレにいかないのが普通です。しかし、年を重ねるといろいろな要因が絡み合い、高い頻度でトイレに行きたくなる人が増えてくるのです。

危険が多い夜のトイレ

夜トイレに行くのは、それ自体が億劫なものですが、トイレまでの暗い廊下で転んでしまう可能性もあります。厚生労働省が2004年に行った国民生活基礎調査によると、65歳以上の人が「要介護状態」になってしまった原因の第3位が「転倒・骨折」となっていますので、筋力が落ちている人などは暗い場所だけでなく、普段から注意が必要です。
また、暖かい布団の中と寒いトイレとの気温差によって血管が急激に収縮すると血圧が急上昇し、脳卒中や心臓発作を起こすことも考えられます。
さらに、頻尿は加齢が原因だと思っていたら実は膀胱ガンだったなど、重い病気が潜んでいる場合もあります。
「トイレのことだから言いづらい」と自己判断だけに頼らず、心配な点があればかかりつけの医師に相談するなどし、正しい知識を得て適切な治療を受けましょう。

加齢とともに気になってくる夜間頻尿の原因

夜間頻尿の原因は以下のように多岐にわたり、それらが相互に絡み合って起こっています。

原因1●抗利尿ホルモンが減少する

赤ちゃんは昼夜に関わらずおしっこをするためオムツ交換が忙しいものですが、成長するにしたがってオムツが不要になり、水分の摂りすぎなどがなければ日中しか尿は出なくなります。これは、成長とともに分泌される、尿を出しすぎないための「抗利尿ホルモン」の働きによるもの。
このホルモンは通常は夜間に多く分泌されるため、夜はトイレに行くことがなくなるのですが、高齢になってくるとホルモン分泌が減少するため、年齢とともに夜間頻尿が増えていくのです。医療機関では頻尿の治療のために抗利尿ホルモンを処方することもあります。

原因2●内臓の機能低下

加齢とともに腎臓などの臓器の機能が低下します。内蔵機能が低下すると、全身の活動量が多い日中は尿を作る働きが制限され、全身の活動量が少ない夜間により多くの尿が作られるようになるため、夜間頻尿につながっていきます。

原因3●普段飲んでいるお薬の作用

血圧を下げる働きのある降圧剤や、心臓の病気に使う強心剤には尿の排泄を促進する利尿作用があるものも。飲む時間帯を変えることで夜間のトイレの回数を減らせる場合もありますので、かかりつけの医師に相談しましょう。

原因4●膀胱が圧迫される

便秘、子宮筋腫などが原因で膀胱が圧迫されると、尿が出やすくなることもあります。

原因5●水分・塩分の摂りすぎ

自宅に長時間いる高齢者の方は、無意識のうちに水分を摂りすぎていることもあります。また、糖尿病の方は喉が渇きやすいですが、あまり過剰に水分を摂取しないよう注意しましょう。尿の量は1日1~1.5リットル程度が適量。それ以上出ているようであれば、水分摂取を見直してみましょう。
また水分のほかに、塩分の摂りすぎも頻尿の原因のひとつ。塩分の摂りすぎが過剰な水分摂取につながりやすいからです。その他に、高塩分の食事摂取そのものが交感神経のバランスを乱し、頻尿を起こすというメカニズムも推察されています。

原因6●眠りの質の問題

夜寝ているときに目が覚めると「トイレに行きたくて目が覚めた」と考えてしまいますが、実は尿意で目が覚めたわけではなく、加齢による睡眠障害が原因で眠りが浅いため、というケースもあります。

原因7●女性ホルモンの減少

女性の膣や骨盤内にある臓器は、女性ホルモンの影響を受けています。そのため、女性ホルモンが急激に減少する閉経後には膀胱、尿道、膣、肛門などが萎縮して尿トラブルが発生するのです。このような場合には医療機関でホルモン補充療法を受けることで改善する場合もあります。
また、膀胱を支えている骨盤底筋も女性ホルモンの影響でゆるむため、更年期以降の女性は尿道や肛門を閉める力をつけておきましょう。

原因8●1回の尿量の減少

1回に出る尿の量が少なければ、自然とトイレの回数は多くなります。その原因は以下のようにいくつかありますが、治療が必要なこともありますので注意が必要です。気になる症状がある方は、医療機関を受診しましょう。

過活動膀胱

「一度トイレに行きたいと思ってしまうと我慢できない」。このようなことが頻繁に起こる場合は、膀胱の筋肉活動が必要以上に活発になり、意思とは無関係に尿が漏れてしまう過活動膀胱である可能性が。過活動膀胱は脳出血などの脳血管障害でも起こるといわれています。

尿が残る

何らかの理由で尿が出し切れずに膀胱内に残っていると、いつまでたってもすっきりせず、トイレの回数が増えてしまいます。前立腺肥大や、糖尿病で神経障害を起こした膀胱は尿が残る場合が多いようです。

膀胱が小さくなった

膀胱が小さくなって、ためておける尿の量が少なくなることでトイレが近くなることも。膀胱の萎縮は加齢によっても起こりますが、膀胱の炎症などの病気が潜んでいる場合もあります。